マイクロ歯車の話

・・・・・機械はどこまで小さくできるか・・・・・

矢田恒二

マイクロマシンと呼ばれる技術は半導体プロセス技術を可動部分のある部品にも適用することから始まったもので、現在はミリオーダに組み上がった部品まで製作されるようになっている。このような加工法を表面微細加工と呼んでいる。

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マイクロ歯車はいわば微小可動部品の例示品として製作されたものが最初で、ただ動くだけのデモでそのような歯車の直径は125μm、その厚みは3μmであった。その形状は図1のようにただの突起があるだけであり、機構学的な観点から見れば稚拙な構造と言える。この機構が実際に歯車の役目をしたかどうかは不明である。しかし最近では少しの負荷を加えても動けるようなものが作られるようになった。

米国サンディア国立研究所ではいろいろな歯車を表面微細加工で造っているが、歯数19枚、外形76μm、厚み2μm程度の歯車を製作し歯形は完全なインボリュートであるとしている。ここで実際の実験では図2に示す直径800μmの大歯車を小歯車により100,000rpmで回転し、108回の起動停止を行っても問題なかった。最近のホームページのデータでは、小歯車に関しては300,000rpm で回転させて8x108以上の寿命があると言っている。

表面微細加工では厚み方向の加工精度を上げることが難しい、それは一種の写真現像に似た工程を経るので光の干渉問題が発生するためで、これを解決するには光源として紫外線をはじめとする波長の短い光線が使われる。さらに短い波長としてサイクロトロンからでるX線をこの光源として使う方法がある。この方法をLIGA(Lithographie Galvanoformung und Abformung)プロセスと呼んでいる。このドイツ語からも分かるように、リソグラフィ、電鋳、モールディングの意味である。線幅1-10μm、高さ100μm程度の高アスペクト比(深さ寸法/幅寸法)の構造体を高精度に造ることが可能である。この方法により図3に示す全体の直径が1.5mm程度の遊星歯車機構が作られた。この歯車が実際に動いたかどうかは不明である。しかしこれを製作した研究所ではこれより少し大きい外形1.77mm、モジュール38μm、減速比=3:1でNiFe製のものを作り、外形2mm、出力トルク5μNm、回転速度20万rpmで回転する永久磁石モータの減速機として実際に回転負荷をとって動いている。

 

マイクロ歯車の用途はいまだ手探り状態でどこにニーズがあるのかわからないというのが正直なところで、小さな回転体を動かすことができるというデモの域をでていない。とりあえず小さい歯車が作れるということはわかったというレベルである。しかし問題はこのような小さな回転体で潤滑をどうするか、歯車のような幾何学形状のうるさい歯形をどのようにして測るかは全く未知の領域で、今後の研究に待たねばならない。しかしより根元的な問題は微小領域での動力システムとして回転運動が必要なのかという問題がある。これはマイクロという領域をどこまでを指すかということにも関わり、今後の課題でもある。

 

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